インクジェットプリンターライブラリー

染料インク vs 顔料インク ? ニーズに合わせたインクの選択

最高レベルのメッセージ品質や耐久性を確保する上で重要なのは、用途に最も適したインクを選択することです。

多くの場合、必要とされるインクの種類により、どのインクジェットプリンターを購入するかが決まります。 そのため、利用可能なインクの特性を理解することが大切です。

染料インク

工業用の連続式インクジェット(CIJ)プリンターのインクとして最も一般的なのが染料インクです。染料インクは、その比類のない性能と信頼性が特徴です。顧客が求めるほとんどの用途に最適の選択肢です。
この種類のインクで使用される染料の特徴の 1 つは、(お茶に砂糖が溶けるように)溶液に溶けるという点です。

これは、印字されると、印字対象物の色が透けて見えることを意味します。明るい色の印字対象物にコーディングする場合はこれで大丈夫ですが、一部の押出成形品など暗い色の印字対象物の場合は、明るい色のインク(黄色など)でコントラストを出す必要があります。
しかし、黄色の染料インクは依然として暗く見えます。これは、インクが透明で、暗い色の印字対象物が透けて見えるためです。

PVC ケーブルなど、特定のプラスチックを柔軟にするために使用される可塑剤が含まれているプラスチック上に印字すると、時間の経過とともに、染料インクが部分的に溶解する(滲む)可能性もあります。
その結果、時間の経過とともに印字された文字が不明瞭になります。

顔料インク

透明性と滲みの問題により、染料インクが状況によっては適切でない場合もあります。
この問題の解決策として、染料ではなく顔料で発色する新しい種類のインクが開発されました。染料とは異なり、顔料は溶液に溶けず、(水中の砂のように)懸濁液中の小さな粒子として存在します。

この粒子は直径が 1 ミクロン未満です。粒子の大きさは充分に小さくなければなりません。これは、インクジェットプリンターのノズル(最小で直径 37 ミクロン)を詰まることなく通過でき、インクジェットプロセスを中断させないようにするためです。
顔料は、(染料のように)入射光の一部を吸収することで機能しますが、光が印字対象物に到達できないように、各粒子に当たる光を散乱することによっても機能します。

これにより、暗い色の印字対象物上で良好なコントラストを生む不透明インクが得られます。顔料粒子のサイズは慎重に制御する必要があります。小さすぎると不透明度が低下し、大きすぎるとノズルやフィルターが詰まるリクスがあります。
顔料は不溶性であるため、可塑剤中に溶解することはありません。そのため、可塑剤が使用されている PVC ケーブルや他の柔軟なプラスチックで滲むことはありません。

光と熱の耐性

染料インクでは、光と熱の耐性のレベルはさまざまです(だいたいの場合は適切なレベルです)。
このため、保管環境または実際の使用時に熱プロセスや光への曝露を伴う用途の場合、顔料インクの方が熱や光に対する耐性が高いことがあります。

たとえば、コーディング(印字)後に屋外で保管される押出成形パイプや、太陽光や熱にさらされるアルミ窓枠などの場合、顔料インクの方がコーディングが長持ちします。
さらに、顔料インクは、ソルベントを含む可能性がある香料やエアロゾルなどの顧客の製品と接触することにより顔料が溶けないため、優れた耐薬品性を提供することができます。

懸濁液の維持

インク中の顔料は、最大不透明度を確保し、ノズルが詰まるリスクを軽減するため、懸濁液の状態で維持する必要があります。これには、インクの巧妙な化学的性質の組み合わせと、プリンターの改造が必要になります。

攪拌機

一部のインクジェットマシンでは、顔料の沈殿を防止するために、インクタンク内に攪拌機があります。
ただし、これらのシステムには摩耗や機械的な故障が起こりやすいという欠点があります。

さらに、プリンターの電源が切れていても、攪拌機を稼働させる必要が生じることがあります。

循環システム

プリンターによっては、強力な循環システム、特殊なポンプ、革新的なインクタンクの設計により、懸濁液中に顔料の粒子を分散させている場合もあります。
この形状のインクタンクでは、沈殿した粒子を小さな領域に集めるようになっており、強力なポンプが起動すると、より簡単に粒子が分散されるようになっています。

顔料インクによっては標準的なインクジェットマシンで利用できる場合もありますが、顔料の多いインクでは、顔料レベルの増加に対応するため特殊なマシンが必要になる場合があります。
いずれのマシンを使う場合も、顔料インクでは推奨メンテナンス手順に従うことが特に重要になります。

まとめ

染料インクは広範なオプションが利用できるため、顧客の用途のほとんどに適しています。
しかし用途によっては、顔料インクの方が適している場合があります。

染料インクにするか、顔料インクにするかの決定は、以下の要件によって異なります。

  • コーディング(印字)する製品の色は?
  • 必要な文字のコントラストレベルは?
  • 光(または熱)の耐性が重要な要件かどうか?
  • インクを溶解する可能性のある化学物質が製品に含まれているか?

十分に時間をかけて正しいインクを選択することが、コーディング(印字)の用途における成功の鍵となります。

おわりに

記:リチャード・マースデン博士 –Linx Printing Technologies Ltd 主任化学者

リチャード・マースデン博士は、英国リーズ大学で色彩化学の学位および博士号を取得後、カナダのマクマスター大学、および英国ハル大学において有機合成化学のポストドクトラルフェローを勤めました。

1990 年に Linx Printing Technologies に入社する前は、Elmjet 社でバイナリシステム用 CIJ 用インクの開発に関わっていました。公認化学者で、王立化学協会のメンバーでもあります。

さまざまな用途に合わせた選択

インク種類の選択は、価格だけで決定すべきではありません。それぞれのインクが提供する特性と、そのインクを使用する目的とが一致して初めて、最高の力を得ることがでます。例えば、高品質の写真を印刷する目的であば、色鮮やかで光沢感の出るインクが適合します。一方、長期保存を必要とする場合は耐光や耐水性に優れる顔料インクが適しています。さらに、インクの選定はプリンターの互換性に影響を受けます。特に産業用途のインクジェットプリンターの場合、インクとインクジェットプリンターが機能的に効果を発揮するように調整されています。インクのパフォーマンスをテストし、使用する場合はプリンターの適合性(互換性)についても確認する必要があります。

インクの保管方法

インクの適切な保管方法について学ぶことは、その性能と寿命を最大限に引き出すために不可欠です。保管方法が不適切だと、インクは乾燥したり、凝固したり、化学変化を起こす可能性があります。これらはすべてインクの品質を劣化させ、結果的に印字品質に影響を及ぼす可能性があります。まず最初に、インクは冷暗所に保管することをお勧めします。直射日光や熱はインクの化学構造を変化させ、品質を低下させる原因となります。また、乾燥した環境もインクの蒸発を促進し、インクが固まる可能性があります。したがって、湿度を一定に保つことが重要です。また、インクを長期間保管する場合は、未開封のままにしておくことが最善です。開封したインクは乾燥や空気中の酸化により劣化するため、使用予定がない場合は開封を避けてください。また、インク容器は常に密閉して、空気や塵が入らないようにしましょう。最後に、一度開封したインクはなるべく早く使い切ることをお勧めします。開封後のインクは時間と共に劣化が進むため、使用しないまま時間が経つと品質が低下します。これらの基本的保管方法に従うことで、インクの品質と寿命を保つことができます。

インク種類

当社で取り扱うインクの種類は以下のようなものがあります。

  • 速乾性 有機溶剤系インク(有機則非該当)
  • 遅乾性 アルコール系インク
  • UV硬化インク
  • 遅乾性オイル系インク

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